
2020年10月15日 / BLOG
こんにちは。公認会計士・税理士の金森俊亮です。
本日は、監査実務について、筆者の経験を基に書いていきたいと思います。
基準を紹介していくような記事ではなく、実務ではどのようにやっているかを紹介していくシリーズとしていこうと思いますので、会計士受験生の方や経理で監査対応をされている方がわかりやすいような記事になることを目指しています。
本日のお題は、ツイッターでオーダーをいただいたサンプリングについて記事にしたいと思います。
監査は、簡単にいうと財務諸表に計上されている数字が合っているかどうかを確認することです。
数字が合っているかどうかは取引に対して、契約書や請求書等の書類を確認をしていくことが基本です。本当は全部の取引に対して確認ができれば、問題がないのですが、売上高が数百億円となるような会社の取引は売上の取引だけで一万をはるかに超える取引が行われていて、その取引全てを確認することは不可能です。
そのため、無数の取引のうち、いくつかの取引に対して、テストを行うことになります。この際に、選ぶテスト対象のことをサンプリングと言います。
サンプリングは大きく分けて二つあります。統計的サンプリングかそうでないかです。(ローランドみたいですね)
統計的サンプリングとは、例えば年間売上高で何万もの取引の母集団のうち、統計学の考えを基に、いくつの取引をテストすれば、何万もの取引全体の評価ができるというものです。ここでのポイントは全体の評価をするということになります。すなわち、テストしたいくつかの取引にエラーがなければ、何万もの取引においてもエラーは生じていないと判断されます。一方、一部にエラーが生じていれば、全体ではこれだけのエラーが生じているということを評価します。
本当にざっくりと例題を作成すると、1,000,000円の母集団のうち、統計的サンプリングでは10,000分の取引が抽出され、その内、エラーが500円発生すると、1,000,000の母集団のうち、50,000円のエラーが生じていると評価するということになります。もちろん、統計学の考え方を採用しますので、実際のサンプリングや評価は非常に複雑なのですが、簡単なイメージはこんな感じです。
その他、何万もの取引をグループ分けする階層化というのもありますが、ここでは割愛します。
勘定科目の残高が多額で、取引数も非常に多く、重要な勘定と設定している場合は、統計的サンプリングを用いることが多くなります。
実際にどうやっているかというと、クライアントからもらった取引のデータ(仕訳データや販売データでやることが多いです)を統計学の考えに基づいたソフトに入れることで、取引対象を抽出しています。このソフトに入れる際に、監査リスクや許容される虚偽表示の金額なんかをパラメーターとして設定します。そして、テストした結果に関しても、このソフトに入れて最終的な評価をしてもらいます。
また、クライアントからデータがもらえない場合等ソフトに流し込めないような場合にも、別のソフトで統計学に基づいた考えで、何件のサンプルを見れば良いかを算出することもあります。
ここで選ばれたサンプルについて、契約書・請求書・納品書等、取引が正しいことを証明する書類と突き合わせて合っていることを確認するのが基本です。
なお、このサンプリングは無作為(監査人の意図が入らない)であることが基本ですので、テストしづらいサンプル(資料が本社になく取り寄せないといけない等)が選ばれることもありますし、エラーが出てしまうと、対処に苦慮することもあるので、エラーが生じないことを祈りながらテストをしています。
統計的サンプリングは、上でも書きましたが、統計学の素養がないと理解が困難です。実際、会計士は文系資格ですので、統計学に明るい方は少ない印象です。もちろん私も同じでして、何回か統計学の本を読んでみたのですが、難しいなと感じます。なので、上述したソフトの構造が分かっているかというと詳しくは分かっていないのが実情かと思います。
本日の記事は少し長くなってしまったので以上となります。非統計的サンプリングについては明日に回します。
統計的サンプリング、いかがでしたでしょうか。監査は膨大な数の取引に対して行いますので、サンプリングベースで作業をしています。そのため、統計学の知識があった方がより理解は深まるものと思います。ただ、統計学は慣れないんですよね。。自分自身の課題です。
それでは次回の記事で会いましょう。
必要事項をご記入いただき、(送信)ボタンを押してください。
お問い合わせに関しては2営業日以内で返信いたします。