
2020年10月16日 / BLOG
こんにちは。公認会計士・税理士の金森俊亮です。
本日は、昨日のサンプリングの続きで、非統計的サンプリングについて記事にしたいと思います。
今回は統計学的な知識は全く必要なく読めますので、昨日よりかは読みやすいかと思います。
また、非統計的サンプリングに関しては、監査人の趣味嗜好が働くところで、記事のボリュームが多くなってしまうので、2回に分けて書こうと思います。本日の記事も明日の記事も最後まで読んでいただければ幸いです。
非統計的サンプリングとは、昨日の記事で解説した統計的サンプリングのように、統計学的な考えに基づいたソフト等は使わずに、監査人がテスト対象の母集団を俯瞰して、テスト対象を抽出することです。
こちらは、統計学の考えを用いていませんので、テストした対象についてしか評価はできません。
昨日の例題のように、1,000,000の取引の内、監査人が10,000円分のテスト対象を抽出して、テストを行い、500円のエラーが抽出されても基本的にそこで終わりです。500円のエラーが発生しているということと、990,000円については何もテストをしていないということになります。990,000円については、どういうエラーが潜んんでいるかも推定ができないという状況になります。
ただし、監査人が自身の経験を基にサンプリングを行うので、怪しい取引を抽出することができるというのが特徴となっています。
非統計的サンプリングは主に以下の場面で使用します。
監査では、不正を発見することは目的ではありませんが、結果として重大な不正を見逃すと、重要な虚偽表示の見逃しに繋がります。
そこで、監査では不正が起きるシナリオを想定して不正リスクを認識します。例えば、社長が勝手に売上システムにアクセスして架空の1億円の売上を計上する等です(もちろん、こんな単純なシナリオは組みません。例題としてです)
そのリスクシナリオに沿う形で、取引を抽出します。ここは監査人の勘が働きますので、統計的サンプリングは使いません。不正は一部で起こりますので、全体推定には当然ながら合致しないんですね。
重要な勘定(重要なエラーが発生する可能性が高い勘定)は、残高全体に対して、間違えていないと言えるだけの監査証拠を集める必要があるため、母集団を推定する統計的サンプリングを使います。しかし、勘定によっては重要性の基準値(監査意見を超えるほど多額だけど、重要な勘定にしないこともあります。
間違いづらい単純な取引であったり、不正が起きる可能性が低い勘定等です。この場合、監査では、何か一つ、監査手続を実施すればよく、勘定全体に対して、合っているという証拠まで入手する必要はありません。ですので、監査人が間違えていそうだなと思う取引を抽出して、テストして終わりでも問題ありません。この場合も、仕訳データや勘定の明細から取引を抽出していることが多いです。
監査手続は、契約書等との突き合わせ以外にも様々な手続を行います。
例えば、分析的実証手続といった監査手続も実施する場合、基本的には、勘定残高全体に対してある程度確からしいという様に分かります。
さらに仕上げで突き合わせを行うような場合は、必ずしも統計的サンプリングを採用しなくとも、監査証拠の十分性は担保できているものと考えられます。
本日の記事は以上となります。
非統計的サンプリングがどういったものか、また使用する場面について記事にしました。
明日は、より実務的な観点で、どのようにサンプリングしているか等を記事にしたいと思います。
それでは次回の記事で会いましょう。
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