
2020年10月17日 / BLOG
こんにちは。公認会計士・税理士の金森俊亮です。
本日は、昨日の非統計的サンプリングの続きを記事にしたいと思います。昨日は、非統計的サンプリングの定義やどういった場合に非統計的サンプリングを選択するかについて記事にしました。
本日の記事では非統計的サンプリングを行う際にどういう風にサンプリングしているか、非統計的サンプリングを使う機会が多いかどうかについて記事にします。
非統計的サンプリングの抽出は、基本的に会社が会計処理を誤っている可能性が高い取引を抽出することを目的としています。
そのため、会社から入手した仕訳データや勘定科目明細を抽出しやすいように加工をして、その中から選びます。
観点としては、新規の得意先&取引先との取引や、取引金額が多額の取引、また売上高であれば、粗利率が異常なもの(例えば赤字になっていたり、同一の得意先で利益率が過年度と比較して低かったり高かったりするようなもの)を抽出します。
ですので、ここでは監査人の腕が試されます。結構、やっていると奥が深いものはありますし、会社の勉強にもなります。
また、不正リスクに該当するようなものは、不正リスクシナリオに沿った取引をしっかり抽出する必要があります。
非統計的サンプリングを使う場面は多いと思います。理由としては主に以下の2点です。
理由としては統計的サンプリングは以下の3つの観点から少し使い勝手が悪いからです。
統計的サンプリングは、母集団の評価をするため、予期しないエラーがある際に、重要な虚偽表示と推定される可能性が高まります。
また、テストをする対象件数が大量になってしまい、現実的でない場合もあります。大体、期末監査期間にの期間中だと、1つの勘定で15件を超えるくらいの取引に新規で資料を依頼することは、中々に厳しいものがあるというのが、筆者のこれまでの感覚です。
さらに、統計的サンプリングは、基本的に母集団に計上されている取引の実在性や金額の妥当性といった観点で評価をしますので、基本的には網羅性が監査要点となる負債や費用に関しては不向きになります。(もちろん、負債や費用に関して実在性をしっかり検証するという場面では統計的サンプリングを採用することもあります)
以上のような観点から、統計的サンプリングを採用する場面は多くありません。
一般的に統計的サンプリングを採用する局面の多くは、売上高で証憑(契約書や請求書等の資料)突合と売掛金の確認をする際に採用されていることが多いといった印象です。ただし、売上高に関しては、期中の段階から計画的にやったりして、何とかやり切っているという感じでしょうか。
一方、最近は監査においても、無闇やたらに重要な勘定にしない風潮になっていると思われます。重要な勘定は、本当に重要なエラーが生じる可能性があるものをしっかり狙い定めて設定しています。売上・売掛金・売上原価・買掛金・棚卸資産といった、売上総利益に関連する科目は、重要な勘定としていると思いますが、それ以外は会社の性質によって、重要な勘定にするか否かはまちまちかと思います。
この場合は、監査計画の段階で、しっかりと重要な勘定にしないことの理由を書いておき、証憑との突き合わせは必要最低限、エラーが起きるとしたらといった観点でサンプリングをしているものと思われます。
こういう場合の非統計的サンプリングを行う際は、販管費科目は月次での残高分析を行い、異常に増加した科目の取引を非統計的サンプリングで抽出したり、貸借対象表科目は、期中の増減取引(固定資産や有価証券の新規取得といったもの)を抽出をして、監査を行い、残りの残高に対しては重要なエラーが生じていないと判断する調書を作成しているものと思われます。
ただし、こういった監査へのアプローチの仕方は、各法人やチームによって異なることはご了承ください。
本日の記事は以上となります。今回の連載は、会計士試験の受験生の方や経理担当の方を主なターゲットとして記事にしましたが、分かりやすかったでしょうか。内容が難しいですし、少し複雑だったので、難しかったのではないかと思います。
私自身も統計学の素養があるわけではなく、統計的サンプリングはソフトに頼って評価をしている状況なので、完全な理解ができているとは、とても言えません。
ただし、監査ではこういった形で統計学のソフトも採用しながら、統計的サンプリングを行ったり、非統計的サンプリングへの道筋も書いてやっているんだなということを分かってもらえればと思います。何か質問がありましたら、私のTwitterにコメントやダイレクトメールをしていただければと思います。
それでは、次回の記事でお会いしましょう。
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