
2020年10月18日 / BLOG
こんにちは。公認会計士・税理士の金森俊亮です。
本日もツイッターでオーダーをいただいた監査実務において実施する計画段階の分析的手続と最終段階の分析的手続について記事します。
目次
そもそも分析的手続という言葉が馴染みがないと思いますので、解説します。
分析的手続とは、監査の対象としている財務諸表の数値を前年度の財務諸表の数値、予算、同業他社、または人口等のような財務とは関係ない数値等と比較分析を行うことです。月次で並べて分析することも分析的手続と言います。比較対象は、例示したように色々なものがあります。
要は監査の対象となる財務諸表の数値に対して比較になるものを並べてみて、監査人として財務諸表の数値を評価することになります。評価っていうのも曖昧ですよね、それは計画段階の分析的手続の目的で紹介します。
分析的手続は必ず2回やることを監査基準では求めています。それが監査を本格化させる前の計画段階と監査の最終段階での実施になります。これ以外にも様々な場面で分析的手続は使われますが、今回の連載では計画段階と最終段階の分析的手続にフォーカスします。
計画段階の分析的手続の実施時期は、期首がスタートしてから4ヶ月くらい経ってからに実施することが多いと思います。3月決算であれば、8月頃に実施しているイメージです。7月の第1四半期決算を終わらせてからですね。この時期は分析的手続をはじめ、その他の監査計画に関する手続を行い、年間の監査の方針を固めています。
計画段階の分析的手続の目的は、監査計画を組むに当たって、重要な勘定(重要なエラーが生じる可能性の高い勘定)は何か、どういった監査手続を行うかを決定するために各勘定科目の評価を行うために実施します。この分析的手続の結果として、重要な勘定の決定(特別な検討を必要とするリスクも)と各勘定科目の監査手続を決定します。
また、この結果は、監査チーム内で行う監査計画に関するディスカッションや審査(監査チーム以外の人間に監査の妥当性を示すために協議をすることです)においても使用しますので、非常に重要な手続です。
計画段階の分析的手続は、一般的な株式会社の場合、3〜5年分くらいの貸借対照表と損益計算書の数値をExcel等の表計算ソフトで並べて、さらに数値が取れるのであれば進行期の数値(証券取引所に上場している会社であれば、第1四半期の実績値を使うことも多いと思います。)も並べて経年の数値の動きを見て分析を行うことが多いと思います。
この分析では各勘定科目の増減も確認しますが、付随して、売掛債権や在庫の回転期間分析等も行い、財務諸表全体として、歪んでいないかも確認します。
私は株式会社の監査以外にも公的な法人の監査も実施していましたが、その場合は前年度の実績値と当期の予算額を比較したりもしていました。公的な法人は予算が株式会社以上に重要で進行期の方針が予算に現れているからです。
この様に会社の特性によって、分析の方法は異なりますが、基本的には過年度の数値を基に財務諸表全体の分析を行うことが計画段階の分析的手続です。そして、この分析的手続の結果、各勘定科目に対する監査アプローチを決めていきます。
計画段階の分析的手続のイメージはこういう形です。1枚のエクセルシートに監査計画にかかる様々な情報を載せていきます。ここに特別な検討を必要とするリスクも記載しますが、サイズの都合上カットしました。
本日の記事は以上となります。
計画段階の分析的手続を実施していると、いよいよ監査が始まるなぁと思うことが多いです。気が引き締まる(少し気持ちも落ち込む??)瞬間ですね。私は、結構好きでした。
明日は、最終段階の分析的手続について記事にします。
それでは、次回の記事でお会いしましょう。
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